現在、全国で92施設、それぞれ独立採算制をとり、地域の中核病院として住民から厚い信頼を得ている赤十字病院。いずれも安全性・効率性の向上を含め、質の高い医療実現に向けた取り組みを積極的に推進している。 メディシステムソリューションの医療機関用グループウェア「CoMedix(コメディクス)」、インシデント管理システム「ファントルくん」の導入を通じて、さらなる「医療の質」向上を目指す京都第一赤十字病院と長野赤十字病院を取材し、IT化推進の経緯と今後の展望について聞いた。
京都第一赤十字病院が目指す院内IT化の第一の目的は医療安全の向上だ。その一環として(財)日本医療機能評価機構のヒヤリ・ハット事例収集事業に参加しているが、以前は紙での収集でしたが、これをどうにかしたいということで、データをそのまま送付できるメディシステムソリューションの「ファントルくん」を導入した。送付時間の短縮だけでなく、データ入力が簡単なので、発生当日に情報が上がってくるケースも多くなったという。
報告件数は4~7月まで毎月300件を超えている。懸念していた医師からの報告も昨年は年44件と少なかったのが、3カ月間ですでに28件となった。 看護部部長 岡本康子 氏また、「以前より具体的な報告が来るようになりました」と話すのは、医療安全推進室・専任リスクマネージャーで看護副部長の岡本康子氏。ファントルくんの返信機能や転送機能を使い、上がってきた報告に対する改善事項を安全推進室で検討して返答したり、各科合同で改善策を出したりということも、ある程度、メール機能でやり取りを行える。 「こういう患者のインシデントレポートを送って欲しいという依頼を受け、別の科に転送したり、その件に関してこう考えるとコメントが返ってきたりなど、情報共有がより活発になった」と岡本氏は話す。
ファントルくん導入と同時期に、京都第一赤十字病院では電子カルテのネットワークを利用して、院内情報の共有化ができないかということでグループウェア導入も検討された。電子カルテの補助機能として利用しているファイルメーカーとリンクできることから、コメディクス導入を決めた。
ファイルメーカーとリンクできる最大のメリットは、当直表とオンコール表など、医師により医師の目線で作成されたデータと連携できるところにある。これらの情報は総務部から紙資料として配布されていたが、その日の変更などは反映されないため、結局は電話で聞かなければならなかった。現在は確認及び変更をコメディクス上で簡単に行うことができ、業務時間の短縮にもつながっている。また、より簡単に見られるように、これらの情報はログイン前のコメディクストップページから見られる設定となっている。他に手術状況、院内の電話連絡帳、救急受け入れ態勢なども確認できる。
「当院は救急医療に力を入れているので、まずは救急に役立つアイデアを一通り出した段階です」と話すのはコメディクス運用検討プロジェクトのリーダーを務める小児外科副部長の岩田譲司氏。 副院長の池田栄人氏は「これからの病院は企業と同様にマネジメントを徹底して、病院全体の意思統一をしていかなければならない。そのためのツールの1つとしてコメディクスは有効です」とし、今後も、病院の質を高めるために、医療安全と医療情報の共有、医療研修を行えるツールとして、コメディクスをどう利用するか検討していきたいと将来の展望を話した。
京都第一赤十字病院様 2008年09月08日掲載